ラスが3回続くと、だんだんイライラしてくるものです。4回目のラスを引くころには「もう勝てる気がしない」「自分は麻雀が下手なんだ」と考え始める人も多いと思います。
そのとき起きているのは、急に運が悪くなったということではありません。多くの場合、自分で自分の足を引っ張っています。そして、その仕組みに気づかないままでいるほど、連敗は長く続きます。
麻雀を打っていれば、誰でも連敗を経験します。運の要素が大きいゲームなので、波があるのは当然です。プロも例外ではありません。
ただ、私が強く感じているのは、成績をいちばん大きく崩す原因は自分の内側にあるということです。小さな連敗をきっかけに打牌が雑になり、負けがさらに負けを呼びます。4連敗、5連敗するころには、落ち着いていれば絶対にしないようなミスをするようになります。実力がなくなったわけではなく、集中力と気持ちが切れてしまっているのです。
以前、英語圏で私を応援してくださっている方から、連敗したときにどう対処しているのかを聞かれたことがあります。そのときに考えたことを、日本の読者向けにまとめてみます。
麻雀は運と実力のゲーム
囲碁や将棋のような完全情報ゲームでは、ほぼ必ず強いほうが勝ちます。
麻雀は違います。運と実力が混ざったゲームで、経験の浅い人がベテランに勝つことも普通にあります。初心者でもときどき勝てるというのは、麻雀の大きな魅力でもあります。
卓には4人が座っていますが、自分が動かせるのはそのうちの1人だけです。残りの3人が何をするかは、こちらではどうにもできません。
ここで「運」という言葉の代わりに「確率」と考えてみてください。相手の行動は選べませんが、何が起こりやすいかを見積もることはできます。そして何千半荘という長い目で見れば、結果は実力に収束していきます。
何連敗からが「連敗」か
まず知っておいてほしいのは、2〜3回続けて負けるのは連敗のうちに入らないということです。5〜6半荘トップがないことも、それほど珍しくありません。
強い打ち手でも、トップ率は3割前後です。つまり、強い人が卓に着くたびに、7割はトップを取れないということです。1回負けて次の半荘に座っても、またトップを取れない確率は7割のままです。
「これだけ負けたんだから、そろそろ勝てるはず」という考え方は、ギャンブラーの誤謬と呼ばれるものです。過去の結果は、次の半荘の確率に影響しません。
トップ率3割の打ち手が5半荘続けてトップを取れない確率を計算すると、0.7の5乗で約17%になります。6回に1回くらいは起こる計算です。両面待ちでリーチをかけても、一発でツモれる確率は1割もありません。それと比べると、5連続トップなしのほうがずっと起こりやすい出来事なのです。
ラスでも同じです。ラス率20%の打ち手が2回続けてラスを引く確率は4%、3回続けてなら0.8%です。1%足らずと聞くと珍しく感じますが、たくさん打っていれば何度も出会う数字です。
それなのに、なぜ長い連敗はこんなによく起こるように感じるのでしょうか。
連敗が長引く理由
こうした確率を知らないと、自分で自分を苦しめることになります。
負け始めると、私たちは無意識のうちに自分を追い込みます。これは人間として自然な反応です。脳が「危険だ」と感じて、自分を守ろうとするのです。
どういうことかというと、連敗が長くなるほど、自分のプライドは守られます。2連敗なら自分のせいかもしれません。でも10連敗なら「ついていない」「崩れていた」と言えます。誰も責めませんし、自分の本当の実力と負けを切り離すことができます。
これは、とても高くつく自己防衛です。プライドの高い打ち手ほど、平均より長い連敗にはまりやすいと私は考えています。連敗がいつ始まるかは選べませんが、どう終わらせるかは自分で決められます。
やる気がなくなったから負け始めたのか。それとも、負け始めたからやる気がなくなったのか。一度、自分に問いかけてみてください。
闘争・逃走反応
連敗が長引くもうひとつの理由は、もっとコントロールしにくいものです。動物としての本能です。
負けが続くとストレスがたまります。脳は、麻雀で負けていることと、本当に身の危険があることの区別がうまくつきません。脅威を感じると、いわゆる闘争・逃走反応が起こります。
この反応は、野生で猛獣に出会ったときには役に立ちますが、じっくり考えるゲームにはまったく向いていません。一度スイッチが入ると、気持ちのバランスが崩れ、元の状態に戻るまでに時間がかかります。
困ったことに、この状態になってしまうと、できることはあまりありません。だからこそ、なってから立て直すより、ならないように予防するほうが大切です。
ネガティブな考えを切り替える
ティルト(感情的になって打牌が崩れること)は、後ろ向きな考え方から生まれます。後ろ向きな考えが「危険」を作り出し、脳がそれに振り回されて、冷静な判断ができなくなるのです。
ほかの人がアガったとき、こんなことを考えていないでしょうか。
- ほかの人は楽にアガれるのに、自分はいつも苦しい
- あの人のツキがほしい。自分はいつもついていない
- 自分だったら、あの牌は引けなかった
こう考え始めたら、そこで止めてください。せっかくの集中力を、何も生まない考えに使ってしまっています。代わりに、こう言い換えてみます。
- 強いツキを持った相手と打つのは、自分の腕を試すいい機会だ
- ツキがなくても勝てるようになれば、ツキが来たときにはもっと勝てる
- 何が起こるかわからないから、麻雀はおもしろい。いつも勝てたらすぐ飽きてしまう
前向きでいることは、闘争・逃走反応を防ぐいちばん効果的な方法です。危険を感じなければ脳が身構えることもなく、ティルトも起こりにくくなります。
ある友人から聞いた言葉で、理不尽な負け方をしたときに私が思い出すようにしている考え方があります。これから何年も麻雀を打っていけば、こんな不調は何度も経験する。それでも冷静でいて、対局中に負けのことを考えず、目の前の一局を淡々と打てたなら、今夜の結果がどうであれ、もう勝っている。そういう内容です。
自分のティルトに気づく
予防していても、気づかないうちにティルトしてしまうことはあります。
笑ったり冗談を言ったりしていても、内心では腹が立っている、ということもあるでしょう。
サインははっきりしています。基本的なミスをくり返し、打った直後に自分でミスだと気づく。落ち着いていればしない選択をしている。これがティルトです。
そう感じたら、その局が終わったところで席を外してください。お手洗いで顔を洗い、水を飲み、少し休んでから、気持ちを切り替えて卓に戻ります。わざとこちらを挑発してくる人もいるので、そういうときこそ注意が必要です。
そして、負けた分を「取り返そう」と思って打つのはやめましょう。特に天鳳では、失ったポイントを取り返すという発想は役に立ちません。ただ、負けから学ぶことはできます。失ったポイントは戻ってきませんが、それを無駄にするかどうかは自分しだいです。
それでもだめなら、別のゲームを
何をやってもうまくいかず、悪い流れから抜け出せないときの、私のいちばんのアドバイスはこれです。
別のゲームをしてください。
逃げるということではありません。この状態にはまっているなら、視野を広げる必要があります。麻雀はたくさんあるゲームのひとつで、生きるか死ぬかの問題ではないということを、脳に思い出させるのです。
バスケットボールをしてもいいし、ゲームセンターに行ってもいい。麻雀以外の勝負ごとに触れてみてください。また牌に触りたくなったら、すっきりした頭で戻ってくればいいのです。
優先順位を見直す
調子が悪いとき、優先順位はこうなりがちです。
- 勝ちたい
- うまくなりたい
- 打ちたい
これは逆です。私が正しいと思う順番はこうです。
- ゲームを楽しむ(同じ卓のほかの3人にも楽しんでもらう)
- うまくなる
- 勝つ
勝ちは、楽しむことと上達することのあとについてくるものです。1と2を大切にして、毎日少しずつ勉強していれば、勝ちが続く時期も自然とやってきます。
おわりに
連敗は思っているよりよく起こります。でも、長引かせないようにすることはできます。
いちばん大切なのは、崩れてから立て直すことより、崩れないように予防することです。前向きな考え方でティルトを防ぎ、今夜の点数よりも、長い目で見た結果や、麻雀を楽しみながら学ぶことに目を向けてください。
連敗を早めに止められるようになれば、そのぶん、勝ちが続く時期も増えていくはずです。
この記事は、英語圏の雀士向けに npmahjong.com で書いた「How to stop your losing streak right now like a pro」を、日本の読者向けに書き直したものです。(元の記事(英語))



