「えっ、プロの雀士なの!?」
海外の人に自己紹介をすると、よくこう驚かれます。そして次に来るのが「じゃあ、麻雀で生活しているの?」という質問です。
これが、ひと言では答えにくいのです。日本のプロ麻雀の世界は、ほかのプロスポーツを想像している人には少しわかりにくい仕組みになっています。今回は、私が英語圏の雀士向けに書いた記事をもとに、海外の人にプロ雀士をどう説明しているかをまとめてみます。日本の読者のみなさんにとっては当たり前の話も多いと思いますが、外から見るとこう見えている、という視点で読んでいただければうれしいです。
プロ雀士とは
私の説明はいつもシンプルです。プロ雀士とは「プロ団体に所属している雀士」のことです。条件はそれだけです。
ちなみに私は、16期前期から日本プロ麻雀協会に所属しています。
多くのスポーツでは、プロといえば給料やスポンサー契約があって、お金が選手のほうに流れてくるものです。麻雀も同じだろうと考えるのは自然なことです。
ところが、そうではありません。プロ雀士の多くは、麻雀だけで生計を立てているわけではないのです(Mリーグの登場で、少しずつ変わり始めてはいます)。
プロであり続けるための費用
「えっ、プロなのにお金を払うの!?」
これも海外でよく言われることです。英語の記事では、少し刺激的に「プロ雀士は、プロを名乗るためにお金を払っている」と書きました。プロ団体に所属すると、主に次のような費用がかかります。
- プロとしての会費
- 毎年のリーグ戦の参加費
- 年に何度か出場する大会の参加費
- 交通費(地方から東京へ通う場合は特に)
金額は所属する団体や出る大会の数によってかなり変わります。そして支払いが止まれば、プロとしての資格を失います。大会にもリーグ戦にも出られなくなり、評判にも傷がつきます。
そのため、プロ雀士の多くはIT、営業、執筆など、ほかの仕事を持っています。どちらの仕事にも真剣に取り組んでいる人が多く、その結果、麻雀に専念している人より強くなることも珍しくありません。園田賢プロも、会社員とプロを両立しながらMリーガーになったひとりです。
専業のプロを目指す人はたくさんいますが、このレベルで打ち続けるには、まず生活の基盤が必要だということは、あまり知られていません。
大会の賞金で取り返せるのか
「でも、大会で勝てば賞金でもとが取れるでしょう?」
これも定番の質問です。私の答えは「長い目で見れば、大会の賞金は期待値がマイナス」です。どれだけ勝っても、大会の賞金が安定した収入になることはありません。
本当の価値は、タイトルそのものにあります。タイトルは名前を知ってもらうきっかけになり、自分を売り込む材料にもなります。この世界では知名度が大切で、プロとして存在感を保つには、自分自身のブランドを育てていく必要があります。
プロになるまでの道のり
プロになること自体は、思っているほど難しくありません。プロの世界は年々開かれてきていて、ゼロから始めても、1〜2年あればプロになることができると私は考えています。
一般的な流れは次のとおりです。
- 団体を選び、プロテストの日程を確認する
- その団体のルールや規約、所属している有名なプロについて勉強する
- 筆記試験、面接、実技試験に合格する
- 研修を受ける(たいてい1か月もかかりません)
- 会費などを支払う
日本では、仕事や学校の合間にネット麻雀で練習を始める人がほとんどです。入口はどんどん低くなっていて、さまざまな背景を持つ人がプロとして迎えられています。アルゼンチンから来た私も、そのひとりです。
本当に大変なのは、その先です。プロになってから辞めずに続けることが、いちばんの壁になります。
麻雀で生計を立てる方法
麻雀を主な収入源にしたい場合、現実的な選択肢は次のようなものです。
- 雀荘のスタッフやゲストとしての仕事
- 戦術書の執筆(単著や共著)
- 配信や放送での解説、ゲスト出演、対局
- レッスンやコーチング
- そのほか、コンサルティングやコンテンツ制作など
トップクラスになれば、テレビに出る機会がめぐってくることもあります。
Mリーグは、この状況を大きく変えつつあります。チームにはスポンサーがつき、選手は実際に給料を受け取っています。ただ、Mリーガーになれるのはプロ全体の1%にも満たない、ほんのひと握りです。これが例外ではなく当たり前になってほしいと、私は願っています。
プロは強いのか
全員が強いわけではありません。ただ、最強クラスの打ち手の多くがプロであることも確かです。
プロになるための条件は、ルールをしっかり理解していることと、費用を払うことだけです。どの団体も、腕前を客観的に測って審査しているわけではありません。
それでも、リーグ戦という環境で打ち続けていれば、努力しだいで一気に強くなることができます。同じリーグの相手と何節にもわたって真剣勝負を重ね、その成績が昇級や降級というかたちではっきり残るからです。
私が尊敬するプロ
私が個人的に尊敬している打ち手を何人か挙げると、鈴木たろうプロ、村上淳プロ、土田浩翔プロ、小倉孝プロ、金太賢プロ、多井隆晴プロ、小林剛プロといった方々です。みなさんの対局は、YouTubeでもたくさん見ることができます。
プロになるべきか
正直に言うと、プロ雀士になることは、あまり賢い選択ではありません。
ただし、取り憑かれるほど麻雀が好きなら話は別です。
10年以上プロを続けている人たちは、ある意味でストイックです。純粋に麻雀のために続けています。自分が世界一強いと本気で信じている人もいれば、知名度や肩書きを楽しんでいる人もいます。
理由はどうであれ、長く続けるには強い動機が必要です。入口は年々広がっていますが、プロ雀士のイメージはまだ決していいとは言えません(Mリーグがそれを変えつつあります)。
おもしろいことに、日本の最強クラスの打ち手には、アマチュアも大勢います。先生だったり、プロの世界にまったく興味がない人だったりします。
プロの世界は、入るのは簡単でも、残り続けるのが大変な場所です。
プロの肩書きがあることの大きなメリットは、大きな大会に出られることと、メディアに取り上げてもらえることです。麻雀の本を出したいなら、これはとても大事です。毎月のように新しい戦術書が出る中で、読者は誰のアドバイスを信じるかを慎重に選んでいるからです。
プロを目指すかどうか迷っている人や、海外の友だちにプロ雀士のことを説明したい人の参考になればうれしいです。
この記事は、英語圏の雀士向けに npmahjong.com で書いた「What's a professional mahjong player and how can you be one?」を、日本の読者向けに書き直したものです。(元の記事(英語))



