初心者から中級者の頃は、「降りれば損はしない」と思いがち。だが、それは違う。降り続けて、一度も放銃せずに、それでも負けたことは何度もあるだろう。ベタオリは、「失点を確定させる行為」だ。平均局収支は、0「以下」で。自分の和了の可能性を自ら捨て、ツモられたり、テンパイ料を払わされたり。その時点で、EV(期待値)は必ずマイナスになる。降りること自体に、明確な「コスト」がある。
降りても点数は減る
麻雀を覚えたばかりの頃は、放銃しなければ負けない、と考えがちです。リーチが入ったら現物を切り、危なそうな牌は全部止める。一局を振り込まずに終えられたら、なんとなく「うまく守れた」気持ちになります。
でも、一度も放銃せずに半荘を終えて、それでも沈んでいたという経験は、多くの方にあると思います。理由はシンプルで、降りている間も点数はちゃんと減っているからです。
ベタオリした局で起きることを並べてみます。
- 自分の和了率が0になる
- 他家にツモられれば支払いが発生する(親のツモや、自分が親のときの子のツモは負担が重い)
- 流局時に他家がテンパイしていれば、ノーテン罰符を払う
- 自分が親なら、連荘の可能性も手放す
ノーテン罰符は場に3000点です。1人テンパイなら、ノーテンの3人が1000点ずつ。2人テンパイなら、ノーテンの2人が1500点ずつ。3人テンパイなら、ノーテンの1人が3000点を払います。
つまり、ベタオリした局の収支がプラスになることはありません。他家どうしの放銃で終わるか、全員ノーテンで流局すれば0点で済みますが、それより良くなることはなく、多くの場合はマイナスです。降りるという選択は、ある程度の損を先に受け入れることでもあります。
比べる相手は0点ではない
ここで大事なのは、ベタオリの期待値を0点と比べないことです。比べるべきは、押した場合の期待値です。
押せば和了れる可能性があります。その代わり、放銃する可能性もあります。降りれば放銃はほぼなくなりますが、和了の可能性も消え、他家のツモや罰符による失点は残ります。
たとえば仮の数字で、ある局面で押した場合の平均局収支がマイナス300点、降りた場合がマイナス800点だとします。どちらもマイナスですが、この局面では押したほうが損が小さいことになります。逆に、押した場合がマイナス2000点なら、降りたほうがいい。
リーチを受けた局面では、押しても降りてもマイナスということがよくあります。そのときの判断は「どちらの損が小さいか」の比較です。降りることにもコストがあると分かっていないと、この比較そのものができません。
それでも降りるべき場面
もちろん、ベタオリが正解になる場面はたくさんあります。大きく分けると二つです。
一つは、押した場合の損のほうが大きい場面です。たとえば親リーチを受けて、自分の手はテンパイまで遠く、和了っても安い。こういうときは押しても見返りが小さく、放銃したときの失点は大きいので、降りたほうが損は小さくなります。
もう一つは、投稿でも書いた順位点の話です。
- オーラスのトップ目で、放銃さえしなければ逃げ切れる可能性が高い
- 順位点の比重が大きく、ラスを避けることが収支を大きく左右するルール
こういった場面では、その局の局収支を少し落としてでも、半荘全体の結果を守るほうが大切です。局収支ではマイナスでも、順位点で取り返せる。未来の自分への投資のようなものです。
ただし、それはあくまでコストを払った上での話です。降りたからゼロ、と考えるのはやめましょう。「この局の損を受け入れて、順位を守る」という意識を持って降りるのが、正しいベタオリだと思います。
回し打ちという選択肢
押すか、ベタオリするか。その二択だけで考えると、どうしても極端になりがちです。その間にあるのが回し打ちです。
回し打ちは、危険な牌は切らずに、安全度の高い牌を選びながら、できるだけテンパイを目指して手を進める打ち方です。たとえば、テンパイに取るには無筋の牌を切らなければいけないとき、その牌は手に残して、現物の対子を落としながら別の形でテンパイを目指す、といった打ち方です。
和了まで届かなくても、流局までにテンパイできれば罰符を払わずに済み、多くの場合は受け取る側に回れます。多くのルールでは、役がない形でもテンパイの形になっていれば、流局時にはテンパイとして扱われます(いわゆる形式テンパイ)。ベタオリのコストのうち、罰符の部分を取り返せるわけです。完全に降りるか、全部押すかの間に、こうした細かい選択肢があることを知っておくと、守備の質がかなり変わります。
何もしないことにもコストがある
投稿の最後には、「何もしない」ことのコストは目に見えないだけで、必ず発生している、とも書きました。
麻雀はまさにそういうゲームで、そもそも「何もしない」という選択肢が取れません。自分が降りていても局は進み、他家の和了や流局に勝手に巻き込まれてしまいます。安全牌を切っているだけのつもりでも、その局の結果から逃げることはできません。
初心者のうちは攻めていい
だからこそ、初心者や初中級のうちは、どんどん攻めていいと思っています。たくさん放銃しても構いません。
押しすぎて痛い目にあう経験がないと、どこまで押せるのか、どこからが無理なのかが分かりません。降りてばかりいると、その線引きを学ぶ機会そのものがなくなります。自分の限界がはっきり見えてくるまで攻めて、そこから守備を覚えていく。そのほうが、結果的に押し引きの判断が早く身につくはずです。
2026年7月22日の投稿をもとに、加筆してまとめました。(元の投稿)



