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コラム

プロ雀士の二つの「成績表」

プロ雀士の二つの「成績表」
ニコラスの写真

プロ麻雀には少なくとも二つの「成績表」があるんだなと思う。一つは、短い動画や一局の場面から生まれる印象の成績表。もう一つは、リーグ戦のように長い時間をかけて積み上げる競技者としての成績表。どちらもプロ活動の一部です。

プロ雀士がどんなふうに評価されているのかについて、最近考えていることを書いておきます。

特定の動画や選手を取り上げるつもりはありません。考えたいのは、その評価の仕組みのほうです。

印象の成績表

一つ目は、短い動画や一局の場面から生まれる印象の成績表です。

発声がはっきりしているか、牌の扱いが丁寧か、和了ったときや放銃したときにどんな表情をしているか。そうした数秒の姿が切り取られ、SNSで広がり、見た人の中に「この人はこういうプロだ」という印象が残ります。

この成績表の特徴は、つくられるのがとても速いことです。半荘を一回も見ていない人でも、一局すら最後まで見ていない人でも、採点に参加できます。良くも悪くも、たった一つの場面で点数が大きく動きます。

競技者としての成績表

二つ目は、リーグ戦のように長い時間をかけて積み上げる競技者としての成績表です。

麻雀は運の要素が大きいゲームなので、数半荘の結果だけでは実力はほとんど分かりません。だからこそ、プロ団体のリーグ戦は長い期間をかけて、たくさんの半荘を打った合計で昇級や降級を決めていきます。

私も関西のリーグ戦を打っています。リーグ戦の一半荘一半荘が、SNSで話題になるような形で人の目に触れることは、あまりありません。それでも、配牌に恵まれない半荘で失点を小さくおさえたことや、苦しい展開から少しずつ持ち直したことは、どの選手の成績にも数字として静かに残っていきます。こちらの成績表は、つくられるのが遅く、そして地味です。

二つを混ぜてしまうと

この二つを混ぜてしまうと、選手が何を評価されているのかが分からなくなります。

たとえば、ある選手の数秒の所作だけを見て、競技者としての実力まで疑ってしまう。逆に、配信で見ていて楽しい選手のことを、リーグ戦の数字だけを見て「本当は大したことない」と決めつけてしまう。

どちらも、片方の成績表の点数で、もう片方の科目を採点しているような状態です。学校でたとえるなら、体育の成績で数学の評価を決めるようなものかもしれません。

数秒の姿も一面ではある

とはいえ、印象の成績表を「どうせ切り取りだから」と片づけてしまうのも、少し違うと思っています。

SNSで届く数秒間の姿も、その人の一面ではあります。リアルの麻雀では、発声はルールの一部です。ポン、チー、ロンの声が聞き取りにくければ同卓者を迷わせますし、トラブルの原因にもなります。牌を丁寧に扱うことや、相手に失礼のない振る舞いをすることも、卓を一緒に囲む人への敬意です。

人に見られている場では、その一つ一つが、プロ麻雀そのものの印象にもつながります。印象の成績表で減点されたら、悔しくても、自分で直せるところは直したほうがいいと私は思います。

ただし、それだけでは一人の競技者の全ては見えません。数秒の場面は、その人が何百局と積み上げてきたもののほんの一部です。

成績だけでは測れないもの

逆に、競技の成績だけで、その人がファンにどう届いているかを測ることもできません。

リーグ戦の数字が良くても、その選手の麻雀を見て「麻雀って面白そう」と思う人が増えるとは限りません。反対に、競技の成績はまだこれからでも、所作や話し方、麻雀への向き合い方で、多くの人に麻雀の魅力を届けている選手もいます。

プロの価値は、一局の外にも積み上がっていくものだと思います。

今のプロに求められているもの

今のプロ麻雀は、「強さを競う競技」と「人に見られるプロフェッショナル」の両方を求められる時代です。

対局が配信で見られるようになり、一つの場面があっという間にたくさんの人へ届くようになりました。その一方で、プロ団体のリーグ戦は、長い時間をかけて競技者の実力を測り続けています。どちらかが本物で、どちらかが偽物というわけではありません。

アマチュアは単純に強さを競うもの、プロはその両方を積み上げていくもの。私はそんなイメージを持っていますが、これで良いのかどうかは、まだ自分でも考えている途中です。

見る側として、打つ側として

見る側としては、短い動画を見たときに「これはどちらの成績表の話だろう」と一度考えてみると、少し落ち着いて評価できるかもしれません。気になった選手がいたら、リーグ戦の成績や、半荘を最初から最後まで見られる対局配信も見てみてください。数秒の動画とは別の顔が見えてくることがあります。

打つ側としては、二つの成績表を別々に意識するのが良いと思っています。競技の成績表は、一局の結果に一喜一憂せず、長い目で積み上げる。印象の成績表は、発声や所作のように自分で直せるところを一つずつ整えていく。そして、片方の点数が悪いときに、もう片方のことまで責めすぎないことも大切です。

おわりに

二つの成績表は、どちらも大事で、どちらもプロ活動の一部です。何を見て何を評価しているのかを分けて考えるだけで、選手を見る目も、自分自身の麻雀への向き合い方も、少しやさしくなる気がします。


2026年9月23日の投稿をもとに、加筆してまとめました。(元の投稿)


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